2021/12/30
夜になると、針崎の住宅の1階北側の多目的室が冷えるなと感じています。この部屋には、外との出入口を兼ねた木製建具とガラスをはめた袖壁があるのですが、そこから冷気が来るような気がしました。
サーモグラフィ(FLIR C2)で見てみたところ、カーテンの下端の温度がかなり低く、床も冷えていることが確認できました。複層ガラスにしているとはいえ、ガラス部分で冷やされた冷気が下に降りて、カーテン下端のすき間から冷気がもれているのかもしれません。
この冷気をなるべく室内に入れないようにしたらよいのではと思い、冷気止めを設置してみることにしました。
試しに段ボールで冷気止めをつくってみました。段ボールをL字形に折り曲げ、床において自立できるようにしたものです。横から冷気がもれないように、建具と袖壁の幅にぴったりおさまる長さにしています。カーテンは冷気止めの内側にいれておきます。
冷気止めの高さは20cmくらいです。効果のほどはこのあと検討しますが、このくらいの高さであれば、生活するうえでじゃまにはならないと思います。
冷気止めを設置する前と後で、カーテン下端の温度をサーモグラフィで撮影してみました。撮影は29日の夜10時頃、外気温4℃、室温18.5℃でした。エアコンは設定温度20℃で運転しており、ホットカーペットもつけていました。サーモグラフィの画像で温度が高いところはホットカーペットです。床はフレキシブルボードを張っています。カーテンは、レースカーテンと遮光カーテンがあり、両方とも閉めた状態で撮影しました。
下の画像は、冷気止めを設置する前のサーモグラフィの画像です。なお、間口の半分は冷気止めを設置しています(画像左上)。
冷気止め設置前
カーテンの下端は、かなり温度が下がっていますね。また、カーテンの下端から床へ温度が低い領域が広がっていることが分かります。体感的にも、足元に冷気が来るのが分かります。
次は、冷気止めを設置してしばらく経ったあとのサーモグラフィの画像です。
冷気止め設置後
冷気止め設置後は床の温度が若干上がって、より室温に近くなっているようです。また、床の温度が低くなる範囲も、冷気止め設置前と比べて広がっておらず、冷気止め付近で留まっているようです。実感としても、冷気が足元にくるのが緩和される気がしました。
しかし、カーテンを見ると冷気止めより上のほうの温度が低くなっています。冷気止めを超えて、冷気がまだもれているかもしれません。冷気止めをもう少し高くすればより効果的かもしれません。
今回のような簡単な冷気止めでも、ある程度、開口部からの冷気を抑える効果はありそうです。ただ、もっと気温が下がった場合にも効果があるかどうかなど、分からないことは多いですね。もう少し使ってみて、改善できそうなところなど探ってみたいと思います。
また、つねに設置しておくには、段ボールでは心もとないですし、見た目ももう少しどうにかしたいですね。木の板やボード状の断熱材などでできれば、よりいいかなと思います。
2021/12/28
年末年始は、ここ数年でもっとも冷え込むことになりそうです。岡崎でも、最高気温が10℃以下、最低気温がマイナスという日が続いています。せっかくの機会なので、針崎の住宅の温度・湿度を計測しています。1月末くらいまでは計測してみるつもりです。
10月くらいから、幸田の実家の母屋を直していまして、おおむね出来上がりました。床がフカフカになっている箇所がいくつもあり、床の張り直しをおもに行いました。軒の野地板や瓦もいたんでるところがありましたが、すべて直すと金額的にものすごいことになりそう…。今回は、最低限の野地板の補修や瓦の取り換えを行いました。その他、建具の補修、柱や梁の塗装なども行いました。これでもうしばらく使えると思います。耐震改修までできればよいのですが、なかなかそこまでは難しいですね。いつかは、構造も含め根本的に直したいなとは思うのですが。worksにもまとめたいと思っています。
2021/12/27
12/26の日記で昭和52年の治水地形分類図に言及しましたが、現在ではそれを更新した「治水地形分類図(更新版)」が公開されているようです(※1)。2007年から更新作業がされているようで、矢作川水系の治水地形分類図は2021年1月に公表されたようです。下の図が、針崎の住宅周辺の治水地形分類図(更新版)です。
針崎の住宅周辺の治水地形分類図(更新版)(※2)
この治水地形分類図(更新版)を見ると、中心から左部分はおもに氾濫平野と自然堤防からなっていることが分かります。更新版と昭和52年版とでは自然堤防の分布がやや異なっているようです。
それに対して、旧河道(青と白のよこしま模様)の位置は、更新版ではかなり変更されているようです。更新版では、針崎の住宅のすぐ西側に、台地にそって旧河道があり、現在の砂川につながっているようにも見えます。さらにその少し西側、占部川沿いにも旧河道があるようです。
※1 国土地理院Webサイト「治水地形分類図について」、2021年12月27日閲覧。
(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/fc_index.html)
※2 国土地理院 地理院地図Webサイト「治水地形分類図(更新版)」から作成、2021年12月27日閲覧。
(https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
2021/12/26
近年、豪雨による災害が多く発生しています。災害にならないまでも、雨の降り方が激しいと感じることが1年のうちで何度もある印象です。豪雨や水害と住宅設計との関係について、考えておく必要があると感じています。まずは身近なところから見てみようと、針崎の住宅に住んでみて経験した雨と、立地する場所の地形的な特徴について調べてみました。
2020年5月に針崎の住宅に引っ越してきて約1年半が過ぎました。雨が多いシーズンを2回経験しましたが、1年目も2年目も、勢いよく雨が降った時は室内でも雨音が響き、怖さを感じることもありました。夜に勢いよく降った時には、雨が屋根にあたる音で寝られないことも…。針崎の住宅の屋根には厚さ60mmのフェノールフォームを敷いています。断熱性は申し分ないのですが、ボード断熱材だけでは、豪雨時の雨音の響きを抑えるのは不十分なのかもしれません。雨音の緩和のため、かさ比重の比較的大きな繊維系の断熱材を追加しようか考えたりもしています。
針崎の住宅の敷地を含め周囲の土地や道路は、1980年代から土地区画整理事業によって整備されはじめたようです。過去の航空写真や土地登記簿を見ると、針崎の住宅の場所はもともと農地だったようです。
下の図は針崎の住宅の周辺の地形図です。針崎の住宅は図の中心部にあります。地形図を細かく見ると、敷地の周辺は西・北・東側を台地にぐるっと囲まれていて、その台地から若干低い場所が、針崎の住宅の敷地と思われます。
針崎の住宅周辺の地形図(※1)
地形図をより広い視点で見ると、敷地の東側は台地、西側は平野(低地)が広がっていることが分かり、針崎の住宅はちょうどそれらの境界付近に位置しているようです。図の中心から東側に広がるオレンジ色の部分が台地を示しています。西側に広がる薄い緑色が氾濫平野、黄色が微高地(自然堤防)を示しています。図の左上に見える大きな川が矢作川です。
氾濫平野と自然堤防がこのように広がっていることから、矢作川が過去にこの領域で氾濫や流路の変更を繰り返していたことが想像できます。もしそうだとすると、今後も、矢作川の洪水が堤防からあふれた場合、この平野は浸水するリスクがあるかもしれません。矢作川については、「洪水浸水想定区域図」が公表されており、針崎の住宅の計画時にも参照しました。これについては、またあらためて確認してみようと思います。
国土交通省中部地方整備局豊橋河川事務所ホームページに、「治水地形分類図(矢作川下流平野)」というページがありました(※2)。ここでは、矢作川下流の平野での水害の特徴などがまとめられているようです。また、このページからダウンロードできる「矢作川下流平野水害地形分類図」は、昭和52年作成のものですが、地形ごとの洪水時の冠水の可能性や排水の良し悪しなども表示されていて、参考になると思いました。現在の地理院地図の地形図とは若干異なっているようで、台地における谷底平野と後背湿地を区別して色分けしていたり、旧流路を色分けしていたりと、洪水による水害に対応した内容になっているようです。
現在の針崎の住宅の土地は、道路から200mmほど上がっており、西側と南側の土地もほとんど同じ高さです。東側の道路から向こうには古くからの集落があり、その集落の地盤からは800~600mm程度低くなっています。この差が、台地との高低差になるのではないかと思います。雨が強いとき、北側の道路を、水が東側から西側へ流れていきますが、水が集まってくる場所ということではなさそうだったので、平時の強い雨で浸水する可能性は低いと思い、土地のかさ上げはしませんでした。まだ針崎の住宅に住み始めて1年半ほどですが、敷地が水に浸かったり、水たまりがなかなか引かない、ということはありません。
参考までに、地理院地図のWebサイトを利用して、下のような図も作成してみました。標高が高いほど赤く、標高が低くなるほど青くなるようにした、色別標高図です。針崎の住宅は、先ほどの図と同様、図の中心部付近に位置しています。左上に見えるのが矢作川で、図の中心を境に、東側の台地は標高が高く、西側の標高が低いことが分かります。このような図と、地形図、浸水想定区域図などを比較しながら見ることで、自分の住んでいる土地の水害のリスクをある程度は把握できるのではないかと思いました。
針崎の住宅周辺の色別標高図(※3)
針崎の住宅が立地する地域で暮らしていくうえでは、矢作川の洪水について知っておいた方がよさそうです。矢作川の洪水の歴史や現在の治水計画など、もう少し調べてみたいですし、河川のこともあらためて勉強してみたいと思いました。河川については、大学のとき河川工学や水理学の講義を受けた記憶はあるのですが、内容はほとんど思い出せません…。参考になりそうな本を見つけて読んでみるつもりです。そして、水害と都市計画との関係や、さらには住宅設計で考慮すべきことなどを考えておきたいです。
※1 国土地理院 地理院地図(電子国土Web)「数値地図25000(土地条件)」を利用して作成、2021年12月19日閲覧。
(https://maps.gsi.go.jp/#5/36.102376/140.097656/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1&d=m)
※2 国土交通省中部地方整備局豊橋河川事務所Webサイト、「治水地形分類図(矢作川下流平野)」、2021年12月20日閲覧。
(https://www.cbr.mlit.go.jp/toyohashi/bohsai/chisui/yahagigawa/index.html)
※3 国土地理院 地理院地図(電子国土Web)「自分で作る色別標高図」を利用して作成、2021年12月19日閲覧。
(URLは※1と同じ)
2021/07/26
もう今年も夏になってしまいましたが、昨年の冬の、針崎の住宅の温湿度計測の結果をまとめます。
11/28から12/3での計測結果です。最低気温が4度くらいの時期です。エアコンは朝、真夜中に寒いと感じたときに暖房をつけていました。夜は、21時くらいまでならエアコンはつけない日が多かったと思います。
まず室温について。1階の平均気温は19.8度、2階の平均気温は18.9度でした。20度付近の温度となっていて、おおむね快適でした。1階・2階とも温度変化の標準偏差が1度程度でしたので、時間による変動も抑えられていたのではないかと思います。
次は湿度です。新型コロナウイルスの感染対策も考えて、なるべく湿度を下げないようにするため、加湿器を使用していました。加湿器は1階に一台で、在室中は稼働していました。1階の平均湿度は54.4%、2階の平均湿度は53.9%でした。湿度変化の標準偏差は1階・2階とも3%程度でした。快適な湿度は60%程度だと思いますが、1階・2階ともそれに近い湿度となっていたと思います。湿度の時間変動も抑えられていたと思います。
次の冬は最も寒くなる1~2月にも計測してみたいと思います。
2021/04/13
民俗学者赤坂憲雄さんの「3・11から考える「この国のかたち」 東北学を再建する」(1)を読んでみました。赤坂さんが東日本大震災後に沿岸被災地を訪れ思索した記録をまとめた、どちらかというとエッセイに近い本だと思います。津波と地盤沈下によって、家々がたちならび水田が広がっていた場所が、かつての潟にもどったような光景を目の当たりにし、《いつからか、これはそのまま潟に還してやればいいのだ、と考えるようになった。復興・再生へのシナリオが、かならず三・一一の直前の風景の再現である必要はまったくない。たとえば、百年前の潟の風景へとやわらかく回帰するシナリオだってあっていい》(pp. 196)、と言う赤坂さんの言葉が胸に響きました。潟に「還す」。この「還す」という表現は印象的です。
10年程前に読んだ難波和彦さんの「建築の四層構造」(2)を読み返しています。実務では主に住宅設計を行ってきました。この本を再読しながら、自分の設計についての考えを一度整理してみようと思います。何回かに分けて「図書室」に書いていく予定です。
参考文献
(1) 赤坂憲雄「3・11から考える「この国のかたち」-東北学を再建する」、新潮社、2012。
(2) 難波和彦「建築の四層構造-サステイナブル・デザインをめぐる思考」、INAX出版、2009。
2021/03/19
3/17に学位授与式があり学位をいただくことができました。公聴会はオンラインとなるなど例年とは異なる審査となりましたが,なんとかここまで来れてほっとしています。指導教員である葛教授には,学部の構造力学の講義にはじまり,卒論・修論・博論と一貫してご指導をいただきました。実は学部のとき構造力学は苦手な科目で,講義中の課題がなかなかできず講義後に居残っていたこともありましたが,そのとき先生から声を掛けていただいたことを今も思い出します。先生,これまで本当にありがとうございました。久しぶりの研究に当初は不安もありましたが,修士や学部の学生と一緒に研究することが楽しく,彼らとの議論や共同作業を通して学ぶことが多かったです。大学での研究テーマについては,私にできることがあれば,これからも取り組んでいきたいと思っています。
「中動態の世界」は読みましたが,なかなかまとめることがきません…。昨年12月に刊行された「〈責任〉の生成」(國分功一郎・熊谷晋一郎)も目を通しました。「中動態の世界」で引用されていた「身体の使用」(ジョルジョ・アガンベン)も読んでみました。とても理解が追いつく量・質ではないですが,アガンベンの語っていることには惹かれるものがありました。アガンベンのコロナ禍についての発言をまとめた「私たちはどこにいるのか?」は比較的理解しやすく,アガンベン入門としてもいいと思いました。國分とともにアガンベンも言及している『中動態』に加え,アガンベンの言うもろもろの概念(『生の形式』,『使用』,『働かないでいること』,『イデア』,...)はどれも魅力的ですし,建築について考える際にも参考になるのではないかと思います。